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  • こどもの吃音症状を悪化させないためにできることー具体的な支援の実践例と解説
  • こどもの吃音症状を悪化させないためにできることー具体的な支援の実践例と解説

    堅田利明

    2,000円+税

    一般書 教育書 / A5 並製 / 292頁 / 2023/6/25 初版3刷

    ISBN978-4-87616-064-8

    好評! 三刷!!!

    わが子がある日突然どもり出したら。。。

    発吃からその後2割は吃音をもったまま成長するという現実を前提に「吃音を治す」から「吃音を悪化させない」「吃音をもったまま自由にコミュニケーションをとる」といった転換に向けて奮闘する専門家や教育現場の先生方、保護者の実際の支援の例と詳しい解説の書。
    解説編は吃音をどうとらえるか、吃音のある子に保護者ができること、保護者と専門家による支援と協働の在り方について述べる。実践編では就学前、小学生、中学生、成人、それぞれの世代で、本人、保護者、担任の先生、言語聴覚士たちの支援の実際の手記を通して、「吃音症状の悪化とはどういう状態を指すのか」「なぜ悪化させてはいけないのか」に分かり易く答えている。
    資料編は実際の吃音理解授業などで使われるスライドなどの資料を紹介していて、自由にアレンジして教育現場でも実際に使うことができる。

    2023.10.19

こどもの吃音症状を悪化させないためにできることー具体的な支援の実践例と解説

こどもの吃音症状を悪化させないためにできることー具体的な支援の実践例と解説

堅田利明

2,000円+税

一般書 教育書 / A5 並製 / 292頁 / 2023/6/25 初版3刷

吃音を「治す」から「認める」への転換とは

 人と違う特徴を「おかしい」「普通でない」「異常である」ととらえてしまうことで、そうした特徴のある人が心理的に傷つけられ、自尊感情が低下させられたり、活動が制限されてしまったりする「二次障がい」を生じさせてしまうことは、様々な「障がい」といわれるものに当てはまることです。吃音についてもこうした二次障がいが生じうることはもちろんですが、その前段階として本人および周囲の人たちの誤った捉え方によって吃音症状、つまり話し方そのものが悪化してしまうということは意外と認識されていません。「意外と」と表現する理由は、吃音について解説された書籍や文献において「吃音の進展」は必ず目にする専門用語であり、「進展」とは症状の重症化、すなわち悪化であることには必ずと言ってよいほど言及されています。しかし、どのようにしてその「進展」を食い止めていくのか、悪化の未然予防のための手立てについては具体的に述べられていないのです。不思議でなりません。そして、幼児期から学齢初期の吃音への対応は、「いかに吃音の症状を減らすか、もしくは取り除くか」「どうやって吃音を治すか」ということを中心に考えられています。様々な発話指導法も実践されています。しかし、この対応はどこかの時点から「あなたはあなたの話し方のままでいいんだよ」「どもってもいいんだよ」「どもる人は他にもたくさんいるんだから」というふうに変わっていきます。おおよそ小学校中高学年あたりからでしょうか。吃音の自然治癒率は7~8割と言われます。つまり、それに当てはまらなかった人たちに対しては、「治す」方針から「認める」「許容する」方針へと転換されるのです。今までは吃音症状を減らすように、なくすようにと指導されてきた子どもたちに示される方針が、ある時点から180度変わってしまうのです。それを急に受け入れられるでしょうか。一貫しないこの対応に吃音のある子どもたちや保護者家族は戸惑わないのでしょうか。
 「吃音症状が軽いうちは様子を見る、発吃から一年以上経っていたり年齢が4歳を超えていたりする場合は、言語聴覚士などの吃音の専門家に相談して評価や助言・指導を受けることを推奨する」という考え方があるようです。それは、吃音の相談は吃音症状を取り除くためにするもの、吃音を治すことを目的として行われるもの、という前提でなされる対処です。

専門家へ吃音相談をする目的

 私が考える「専門家へ吃音相談をする目的」はこれとは異なります。吃音の初期に見られる吃音症状をその子の生まれ持った話し方として認め、それを悪化・重症化させないようにしてそのままの自然な吃音症状を伴いながら話していくことで成長していけること、家族と共にそのような生活を送れるようにしていくための後押しをすることを相談の目的とすれば、発吃した後すぐに吃音の専門機関を訪れ、吃音の正しい知識と適切なガイダンスを受けることに大きな意味があります。
 それに、そもそも症状が軽いという保護者の判断が妥当であるという保証はありません。また、子どもがどもり始めた日から、もしくはどもる話し方が気になり始めてからの一日一時は保護者にとって不安や孤独の毎日です。時期によって変動していく吃音症状の波に一喜一憂しながら数カ月から一年をどうして待っていなければならないのでしょうか。また、ほとんどの保護者が、正しい知識のないまま不適切な対応(放置)によって症状が悪化していっているにもかかわらず、そのことに気づかないでいるということも少なくありません。保護者が正しい知識を持つ機会を制限するかのような「様子を見る」方針に意味があるのでしょうか。将来、吃音症状が自然消失する可能性が高率であったとしても、専門家は発吃時の状態を聴き、現在の話し方について解説し、今後取るべき具体的な対応とその効果について解説し助言する必要があります。目の前の子どもに今後どのように育っていってもらいたいかという視点に立った相談・助言・指導が求められます。
 私自身は、初回の面談では、来談に至るまでの経緯や保護者の不安な気持ちに十分に傾聴し、受け止めることを大切にしています。その上で初回面談から吃音のガイダンスを保護者の方にはもちろん、子ども本人にも年齢に合わせた説明の仕方でしっかりと行います。ガイダンスでは、①吃音症状をひとくくりにせず連発・伸発・難発に区別して説明する、②症状の悪化(進展)の仕組みを解説する、③悪化(進展)を予防する、もしくはすでに悪化し始めている場合には楽で自然な話し方にもどすことを第一に考える、ということが核となります。そして、親子や家族でその核を踏まえて吃音のことを話していく中で、正しい理解を深めていくことが大切であることを伝えます。そしてその後の相談では、その子にとって自然な話し方(連発・伸発・難発)で過ごせる環境をつくるために園や学校の先生、周りの友達に正しく理解してもらうための伝え方を具体的に練っていくことになります。(餅田亜希子「その子にとって自然な話し方を守り、そだてる」より)