「しりとり」といえば、幼子の遊びだが、これは優雅で知的な大人のしりとりワールドだ。
15世紀室町時代の中期に流行した「文字鋂(くさり)」という歌あそびに出遭ってしまった著者が独自のルールのもとに更に「文字鋂」を進化させてしまった。
ルールはシンプル。
同音でつないだ尾音と頭音をたどっていくと「いろは歌」になるというもともとの「文字鋂」の約束事を踏襲すること。
文語体(旧仮名遣い)であること。
できる限り定型を守ること。
一度使った句はつかわないこと。
しかし、あろうことか著者は、この「いろは」を読み込む歌に意味を持たせようとしたのである。結果、空想の扉は開けっ放しにされ、古事記や万葉集、はては都々逸もどきまで誕生させてしまう。
古典と文字くさりに興味のある方には絶好のテキストとなる。
また、気軽にポケットに納めて『いろは文字鋂(くさり)』の世界に出かけてみるのも一興。句についての解説文ものびやかで楽しい。
|