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書籍出版 海風社 書籍案内

  • 根の国へ 秀三の奄美語り
  • 根の国へ 秀三の奄美語り

    清 眞人

    1,900円+税

    南島叢書89 / B6判 / 312頁

    シマ唄の掛け合いの文化、相撲の文化、戦後混乱期の伝説的人物であったマジアニ、性に関する話、死に関する話等、奄美の魂(ソウル)を形作る様々なエピソードが、秀三さんをはじめとする奄美ゆかりの人々によって語られる。奄美文化を深く探究する一冊。

    2023.10.18

根の国へ 秀三の奄美語り

根の国へ 秀三の奄美語り

清 眞人

1,900円+税

南島叢書89 / B6判 / 312頁

 口承文化というのは音言葉の文化である。音言葉は今言ったように同音異義語をたくさん抱え込む。このことが言葉を暗号化する遊びの精神を強く発展させる。言葉をたとえ・比喩?・メタファーとして用い遊ぶ文化がすくすくと育ち始める。
 しかも、口承文化・音言葉の文化は本質的に掛け合い的だ。それは会話の妙味、会話の快楽、会話の感動、これらの要素の享受が生み出す会話することの喜びという本質的にディアローグ的な情熱をモーターにして自分を駆動する。
 音言葉はどうみたってモノローグにはなれない。声に出された独り言は奇異だ。異常である。しかし書き言葉・文字言葉の世界では、書き手が書くことに集中し情熱を燃やせば燃やすほどモノローグ的となる。独り原稿用紙とにらめっこすることが続くし、それはそれで書き手にとって大変な快楽である。
 音言葉が暗号好きとなればそこから会話の妙味が生まれる。恋愛歌と洒落の世界だ。今でこそ短歌は、孤高の詩人が文字言葉で原稿用紙に独りおのが想念を書きつける文学と思われているが、さにあらず。起源において短歌は歌掛けの音言葉による口承の芸術であった。話芸の洗練が求められ、そこから恋愛歌の妙味と駄洒落の哄笑とが両方発展してくる。
(第1章 口承の文化)より